普段はマネー相談を受ける側の、3人のママさんFP。自身の家計管理や投資についてはどう考え、どう実践しているのでしょうか? そもそも、ライフプランどおりには進まないのが世の常、人の常。その中での、お金のプロのリアルな体験は、一般の子育て世代にも参考にすべき点が多々あるはず。今回はその後編。自らの投資体験とその哲学を、オンラインによる飲み会形式で包み隠さず語ってもらいました。
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参加メンバー
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飯村久美さん
これまでの家計診断は1000件を超え、家計の健全化をサポート。セミナー講師コンテスト「E-1 グランプリ」第3回大会ではグランプリを受賞。テレビなどのメディア出演も多数。お子さんは大学1年&高3。
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西山美紀さん
ライター・コラムニストの肩書も持つ。All Aboutの他、Oggi、マリソル、ミモレ、マネープラス、クルール等でもマネー連載中。取材を重ねながら、学んだことを自分でも実践している。お子さんは中1&小5。
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二宮清子さん
以前は中学・高校の教員だったという経歴を持つ。二宮さんの影響もあって、ご主人も本業のかたわらFP資格を取得されたそう。賃貸経営も行なうなど、幅広い投資スタイルがモットー。お子さんは中3&中1。
※以下、敬称は省略させていただきます。
あっという間に年収分、損をした!
これから、核心の後半に入りたいと思います。テーマは投資ですが、まずはママさんFPであるみなさんの、現在の投資スタンスを教えてください。
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「投資を、夢もあるがリスクもあるものと、地味だけど時間を味方につけてジワジワと資産形成をしていくもの、この2つに分けるとすれば、今の私は後者です。投資信託で長期分散しながらコツコツ積み立てています。老後資金づくりのために国が推進しているNISAやiDeCoにも乗っかって、その恩恵も受けていくというスタイルですね」
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「私も飯村さんがおっしゃったように、iDeCoやつみたてNISAを利用してコツコツと積み立てをしています。株式は、実は電話で注文する大昔からしているのですが(笑)、途中休んだりもしましたが、久々に再開して少ししたときにリーマンショックがあり、慌てふためいて損切りをして、大きな損を出してしまったんです」

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「えええ!」
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「そこまで大きな損を出したのは初めてで落ち込みましたね。でもこの経験から学んだことは本当に大きくて、まず投資をする際に自分の感情をしっかりコントロールすることは難しいということ。株式は、価格が低いときに買って高いときに売る、さらに長く持っていれば配当金を得られる、といった基本的な考え方がありますが、突然のハプニングでは真逆な動きをしてしまうことがあると、身をもって学びました(苦笑)。
もう一つ学んだことがありまして、リーマンショック前から続けていた投資信託の積み立ては、リーマンショックで一時的に大きく元本割れしましたが、そのまま積み立てていたら大きく増えていったんです。少額を積み立てていくことの大切さを痛感しました。それからは投資信託の積み立てを資産形成の基本にして、個別株は株主優待なども楽しみながらという感じですね。経験という目的も含めて、国内株式以外にも、アメリカの個別株や社債、不動産投資等もしています」 -
「私はガツガツ系なので(笑)。昔は株式でトレーダーもやっていました。でも、トレードが意外に儲からなくて、今は西山さんと同じで、株式は優待や配当で、楽しみ目的がメイン。基本は長期保有ですね」
トレーダー時代の刺激はもう求めないのですか(笑)?
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「株式分割とか公募とか、あとは株価がギューンと下がったりしたら、短期で売買とかもあります。資産形成はみなさん同様に投資信託ですが、インデックス(※1)よりもアクティブ(※2)の方が好きだし。たぶん、根はギャンブラーなんでしょうね(笑)。それと現物の不動産投資もしています。海外不動産もやってみようかと思ったんですが、管理が大変なので、海外のREIT(不動産投資信託)にしました」
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※1 インデックス・ファンドのこと。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など株価や債券の指数(インデックス)に、ファンドの基準価額が連動するような運用を目指すファンドのこと。
※2 アクティブ・ファンドのこと。運用会社やファンドマネジャーが独自の見通しや投資判断に基づいて、ベンチマーク以上の収益を目指すファンドのこと。 -
「実は私も、トレーダーではないですが、株式の短期売買をしていた時期がありました。でも、時間を取られるし、値動きにいろんな感情が伴うわけですよ(笑)。なので、今も株式は保有していますが、優待や配当目的の長期保有に変えました。株価をあまりチェックすることもなく、精神的にも穏やかでいい感じです」
Q.ママFPの投資スタイルは? | |
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飯村 久美さん | 投資信託でコツコツ積み立てるスタイル。NISAやiDeCoもやっている。個別株の投資では、優待・配当目的の長期保有が中心になっている。 |
西山 美紀さん | 投資信託での積み立てを資産形成の基本としながら、個別株で株主優待などを楽しむ。国内株式以外にも、米国株や社債、不動産投資等もしている。 |
二宮 清子さん | 資産形成は投資信託。その他は長期保有を基本とした株式投資で、優待や配当を楽しんでいる。他には不動産投資も行なうなど、多彩でアクティブな投資スタイル。 |
投資の積立分は普段の家計から出していく
みなさんは毎月の投資額の枠を決めたり、あるいは投資商品は金融資産の何割までというラインは引いているのでしょうか?
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「基本は毎月定額を積み立てているので、その意味では決まっています。投資商品の割合ですが、個人向け国債を貯蓄商品とすれば、投資比率はあまり高くはありませんね」
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「私がリーマンショックで大きな損を出したときは、投資比率が高過ぎたことも反省点でした。株価が上がり続けているからといって、投資額を無計画に増やしていくのは、やはり危険ですよね。あの経験以降、しっかり計画を立てているのでもう大丈夫ですけれど(笑)。今は、積立投資以外はバッファー(余裕資金、投資資金)が家計にあるときに好きな銘柄を買ったりする程度です。投資比率は社債等も含めると、貯蓄商品と半々くらいでしょうか」

それでも、結構高い比率ですよね。
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「私はもっと高いですよ。でも、現預金もないと不安なので、投資をした分、貯蓄もします。すると生活費がどんどん減って、家計的にはいつもギリギリ。こういう投資は、人様にはおすすめできませんが(笑)、私は基本的に浪費型なので、生活費は余裕がない方が無駄遣いしなくていいんです」
Q.積立投資に回す額や割合はどのくらい? | |
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飯村 久美さん | 毎月一定額を積み立て。元本保証の個人向け国債を除くならば、投資比率はあまり高くない。 |
西山 美紀さん | 積立投資の定額をベースとしつつ、家計に余裕がある時に個別銘柄を買う。投資とそれ以外の比率はおよそ半々。 |
二宮 清子さん | 預貯金よりも投資の比率の方が高い。ただ、投資をした分は必ず預金もするため、家計はさほど余裕がないが、無駄遣いをしない効果がある。 |
では、投資資金はどう捻出されているのですか。貯蓄を取り崩すとか、生活費を下げてそれに充てるとか。
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「私の場合は、基本的には日々の家計の中から投資できる金額で積み立てるという流れですね」
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「これからつくっていく資産では、西山さんと同じ。毎月貯蓄に回せる部分のうち、何割かをiDeCoなどで積み立てています。また、今ある貯蓄の一部を投資に回すということもあります。その割合はそのときのリスク許容度に応じてということですね」
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「株式は余裕資金で、投資信託は生活資金、家計から出しています。収入が上がればその分、定期預金をして、投資商品も買うようにしています」
夫がダメ出ししてもその銘柄は買う!?
例えば、一般のママさんが投資をする場合、ご主人の同意は必要だと思いますか?
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「家計から捻出している資金であれば、やはりご主人の同意は基本的には必要ではないでしょうか。夫婦の共有財産ですから」
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「私も同意見。資産形成は家族が同じ方向を向くのがベストなので。それで、家計の決算として年2回程度、資産状況は家族で共有すべきだと考えていて、そのとき運用成績も伝えればいいのでは。ただ、へそくりでされるのであれば、そこは切り分けて考えてもいいかもしれません」
では、逆にみなさんのご主人が投資をするとき、妻であるみなさんに報告や同意を求めたりはされるのですか?
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「夫は投資に積極的ではないのですが、商品選びを私がアドバイスする形で、つみたてNISAを続けています」
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「ウチの夫はします。投資額はそれほど大きくはないですが。でも、その銘柄についても夫は仕事が忙しいので、結局、私が管理しています」
ご主人の選定した銘柄にダメ出しをすることは?
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「前はしましたが、今は絶対上がらないと思ってもしません。一応、夫のプライドを尊重する意味で。私もされたくないですからね。仮にダメ出しされても私は買いますけど(笑)」
ネット証券と大手証券、ともにメリットを活かす
投資には勉強や情報収集も必要だと思いますが、ビギナーの方にはどういう方法がおすすめですか?
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「日経新聞のマネーに関する記事や、日経のWebサイトも便利です。あと、ベーシックなことなら、金融広報中央委員会の情報サイト『知るぽると』が分かりやすいのでおすすめですね」
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「私は移動中とかお風呂の中で、証券会社が発信しているマーケット情報の動画をよく見ています。コロナ禍で人と会う機会が極端に減ったため、フレッシュな情報が入りにくいですよね。なので、情報収集はネットを活用しています。また、初心者の方には、マンガでもいいので資産運用の本を一冊制覇して、全体像はつかんでくださいねとアドバイスしています」
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「私自身は、小さな金額から実際に投資をすることが勉強になると感じています。それで一時、種類が増えすぎて収拾がつかないこともありましたが……(笑)。マネー初心者の方であれば、最近は女性誌などでもマネーの記事が掲載されるのでおすすめですね。自分が好きな雑誌なら、自分に近い世代や年収、ライフスタイルにあった記事になっていて入りやすいと思います。あとは、何か調べたいと思ったら、All Aboutもいいですよ(笑)」
証券会社選びはどうでしょう。全国に実店舗を構える大手と手軽なネット証券、どちらがいいですか?
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「手数料などのコスト面を考えると割安なネット証券が第一候補になると思います。でも、ネット証券に口座を開いても、実際には何も買っていない人もいらっしゃると感じます。『何を買ったらいいか分からない』『まだ自信がない』などと理由はさまざまだと思いますが、そういう方なら大手証券会社で担当者に相談するのも選択肢のひとつ。ただし担当者の方に完全にお任せではなく、自分でしっかり調べてから相談にいくことがとても大切ですね」
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「ネット証券も利用しますが、大手証券会社でも買っています。担当者の方が私の投資スタンスを理解していて、サポートが的確。これはネット証券にはない良さですよね」
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「私も両方利用していますが、ネットが苦手、自分で投資判断ができないというなら、大手がいいでしょう。大手はIPOや社債の取扱件数が多いので、そこは私にとってメリットですね」
投資は「いつかやる」のではなく「今やる」
昨年はコロナに終始した1年でしたが、今後はどういう投資がおすすめなのか。特にママさんを対象に教えてほしいのですが。
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「私自身の投資の方法もそうですが、資産形成なら基本的には投資信託でコツコツと積上げるのがいいのではないでしょうか。もし株式に興味があれば、小さな金額から試して、優待などで楽しみながらという方法もあります。例えば、百貨店の買物が10%オフ(限度額あり)になる優待や、女性なら好きなブランドの化粧品の優待なら、きっと使いますよね。とはいえ、株価が高いときに買うことのないように、買うタイミングや投資する金額はしっかり考える必要はありますが、株式投資にはそういった楽しめる要素があると感じています」
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「アベノミクス以降、株価の右肩上がりは続いています。しかし、まだ不透明というか、コロナの出口が見えないのも確か。なので、私は個別株を自分で選定するより、今はパフォーマンスのいい先進国や成長世界株に投資する投資信託を選びます」
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「個別株なら、成長が見込める企業や、自分が応援したいと思う企業がいいと思います。基本保有で優待や配当などを得ていくスタイルは、値動きに一喜一憂せずにいられます。また、コツコツ資産形成をしていくなら、みなさんが言われるように税制優遇の制度を上手に活用しながら、世界に投資する投資信託を選択していくのが、ママさんにはいいと思います」
Q.ママにおすすめの投資方法は? | |
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飯村 久美さん | 成長が見込める企業や自分が応援したくなる企業の株を買うのもいい。資産形成なら税制優遇のある制度や、投資信託がおすすめ。 |
西山 美紀さん | 資産形成なら投資信託でコツコツ積みあげるのがおすすめ。株式投資に興味があるのであれば、ご自身のライフスタイルに合う優待などを楽しむのがいい。 |
二宮 清子さん | パフォーマンスの良い先進国や成長世界株に投資する投資信託を買うのがいい。 |

では最後に、これから投資をしようと思っているママさんにエールをお願いします。
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「資金も、例えば毎月5000円から積み立てを始めてみるのもいいと思います。家計としてリスクをとれる額は違いますからね。損をする可能性はゼロではないですが、そもそも、損をして学ぶことの方が多い。大事なことは、「勉強×行動」だと思います。勉強してから……だと、なかなかスタートできず、時間やチャンスをロスするかもしれないので、学びながらも実際に購入してみることが大事だと思います」
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「私は投資信託の仕組みについて、FPの資格を取得しただけでは、今思うと十分には理解できていなかったと感じました。『なるほど!』と腹落ちしたのは、実際に投資信託を買って、それを売るという一通りの経験をしたときです。二宮さんもおっしゃいましたが、少額でまずは行動してみることがおすすめです。固定費を中心に家計を見直せば、投資に回す資金は少し出るかなと思います」
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「大事なことはお二人に言っていただきました。私からは、なぜ投資をするのか、その目的を明確にしてほしいと思います。それによってリスクの取り方も変わってきます。まずはライフプランを立ててみましょう」
みなさま、今回はいろいろありがとうございました!
ママFPならではの家計管理と投資の話、いかがでしたか? お酒の力も手伝ってか、みなさま本当にいろいろと語ってくださいました。ここでのお話を、ぜひ今後の家計管理や投資に活かしてくださいね。
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