「なかなかお金が貯まらない」とか、「ほしいものや、やりたいことがあるけれど予算的に無理そう」と思ったことはありませんか? それは、「ラテマネー」にも原因があるかもしれません。ファイナンシャル・プランナーで、All About「貯蓄ガイド」の西山美紀さんに、ラテマネーを見直して、自分らしいお金の使い方をするための方法をうかがいました。
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「ラテマネー」ってどんなもの?
ラテマネーは何の気なしに使ってしまう、ちょっとしたお金
SNSやインターネットで「ラテマネー」という言葉を目にしたことはありませんか?
「ラテマネーとは、『ほんのちょっとしたもの』に何の気なしに使ってしまうお金のことです。アメリカで人気の資産コンサルタントのデヴィッド・バック氏が、自身の投資講座での経験をもとに考案した言葉で、『自動的に大金持ちになる方法(※)』という著書で紹介されています」(西山さん)
バック氏の著書によると、受講者のひとりが「1日5ドルも10ドルも貯められるはずない」と話すのを聞き、その受講者が毎朝カフェラテ(正確には、ダブルのノンファット・ラテ)を買っていたことに着目してラテマネーという言葉が生まれたそうです。
「ここで言うラテは、何気なく、習慣的に使っているお金の例に過ぎません。場合によっては、何となく買い続けているお菓子やドリンクかもしれませんし、本来は使わなくていいタクシー代かもしれません。何がラテマネーにあたるかは人それぞれですが、お金を貯められない人ほど、この金額が多い可能性があります」(西山さん)
※「自動的に大金持ちになる方法―オートマチック・ミリオネア」
バック,デヴィッド【著】〈Bach,David〉/山内 あゆ子【訳】
白夜書房(2004/07発売)

どのくらいの金額になる?「ラテマネー」を試算
ラテマネーを減らすことで年間約20万円貯まるかも?
そうしたラテマネーは、1年間でいったいどのくらいの金額になるのでしょうか。
「仮に、毎日何気なく買っているドリンクが1杯180円だったとすると、1年(365日の場合)では6万5,700円の支出です。もし、これが10年続いたら65万7,360円(※1)も使うことになります」(西山さん)
さらに、1日のラテマネーの合計が550円だった場合には、1年で20万750円、10年では200万8,600円(※1)もの金額に!。ちりも積もれば山となるとは、まさにこのことではないでしょうか。
※1 10年間にうるう年が2回あるものとして計算
■毎日何気なく使うお金が180円だったとすると…
1年間では
180円×365日=6万5,700円
10年続けると(うるう年が2回あると仮定)
180円×365日×8年+180円×366日×2年=65万7,360円
■毎日何気なく使うお金が550円だったとすると…
1年間では
550円×365日=20万750円
10年続けると(うるう年が2回あると仮定)
550円×365日×8年+550円×366日×2年=200万8,600円
なかには、「1日180円だったら、1年間で、たかだか6万5,700円でしょう? たいした金額じゃないわ」と思う人もいるかもしれません。しかし、もしそれだけ収入をふやすとしたら、昇給を待つか、もっと待遇のいい会社に転職するなどが必要でしょう。節約に比べると、そう簡単ではないはずです。
さらに、年間のラテマネーが20万750円だとしたら? これだけのお金を節約できれば、「なかなかお金が貯まらない」と愚痴を言うことも、「お金がないから、ほしいものを買えない」と諦める必要もないかもしれません。
ラテマネーの多い人のお財布には短いレシートが多い
では、ラテマネーが多い人には、どのような傾向があるのでしょうか。
「ラテマネーが多い人は、その場の雰囲気に流されやすかったり、長期的な視野で物事を考えることが苦手だったりする傾向があるかもしれません。例えば、『5年後に海外旅行をする』という目的と意思があるなら、海外旅行に必要なお金をどう貯めるかを考慮して買いものをするでしょう。ほしいものがあったとしても、すぐには飛びつかず、本当に必要かどうかを考えてからアクションを起こすのではないでしょうか」(西山さん)
また、ラテマネーを使いがちな人のお財布には、長さの短いレシートがたくさん入っているのでは? と西山さんは推測します。

「何の気なしに、ちょっとしたことにお金を使うため、1日で短いレシートがたくさん貯まってしまうように思います。ひょっとしたらレシートを残しておかないかもしれませんね。一方、よく考えてから計画的に買う人は、買いものにいくタイミングも計画的で頻度が減るため、レシートが長くなることも多いでしょう」(西山さん)
お財布のなかのレシートを見るだけで、ラテマネーが多いかどうかのヒントがつかめるというわけです。
ワクワク感や充足感が伴う支出なら、ラテマネーではない
とはいえ、リモートワークが定着し、外出の機会も少なくなって、職場の近くのお店や自動販売機で何気なくものを買うことが減ったという人もいるでしょう。しかし、ネット通販などで気軽に買いものをする回数がふえていませんか。「1週間でたまる段ボールの枚数が多い人も、ラテマネーを使いがちな可能性があるかも」と西山さんは指摘します。
もちろん、「ほんのちょっとしたもの」への支出がすべてラテマネーというわけではありません。
「例えば、そのお店の新メニューを毎回楽しみに待っている場合や、その商品を手に入れることでモチベーションがアップするものなど。ワクワク感や楽しみ、充足感が伴うものごとにかけるお金や、その人にとって重要なものを買うお金は、本当に必要な支出です。ラテマネーではありません」(西山さん)

これに対し、本当に必要かどうか分からないものや、なくても生活が変わらないもの、無意識に買っているもの、買ってもワクワク感や楽しみがなく買ったことすら忘れてしまうものへの支出は、ラテマネーにほかなりません。
なくても困らないものにお金を使っていないかどうかを知るには、自分の心に聞いてみることも大切です。
自分の「ラテマネー」を確認する方法は?
家計の簡単チェックでラテマネーの有無を確認する
ラテマネーを減らすには、何が自分にとってのラテマネーなのかを把握し、それがいくらあるのかを確認することが大切です。
「家計簿をつけている人は、なくても生活が変わらないものや本当に必要かどうか分からないものへの支出をチェック。さらに、買ったけれども充足感がないもの、買ったことすら忘れてしまったものがないかどうかを、改めて確認してみましょう」(西山さん)
家計簿をつけていない場合には、レシートをためておき、上記と同じ方法でラテマネーがないかどうかをチェックします。ただ、レシートを受取っていない支出の可能性もあります。
「例えば、自動販売機を現金で利用する場合には、通常レシートが残りません。そこで、ICカードやスマートフォン決済など、使用履歴が残る方法で決済すれば、いつ、何にいくら使ったかが分かります。その際、いつも同じ決済手段を利用すれば、トータルの金額も把握しやすくなります。家計簿アプリと連動させれば、家計簿をつける手間もかかりませんよ」(西山さん)
このようにレシートをためたり、キャッシュレス決済や家計簿アプリを活用することは、ラテマネーがないかどうかを簡単に確認する方法の一つでしょう。

無理なく減らす方法を工夫する
家族や友人、気心の知れた同僚などに、習慣化している無意識にやっている支出がないかどうかを聞いてみることも一つの方法です。
周囲の人は、あなたが思っている以上にあなたの行動を見ています。「時間外手数料がかかる時間帯や手段で、銀行口座からお金を引き出している」とか、「ランチのあとにいつもデザートを食べている」など、本来ならば必要のない可能性がある支出があることを教えてくれるかもしれません。
「無意識にやっている、ちょっとしたものごとへの何気ない支出の積重ねが、お金が貯まらない問題につながります。言い換えれば、生活や日頃の行動を変えるだけで、お金を貯められるようになる可能性があります」(西山さん)
自分にとってのラテマネーを把握できたら、減らす努力をしましょう。とはいえ、いきなり完全にやめるのは、案外難しいもの。例えば、買う頻度を2日に1回に減らす、安くまとめ買いしたドリンクを家から持参するなど、無理なく実践できる方法を工夫することも大切です。
投資も検討!自分に合ったお金の貯め方、ふやし方は?
節約したラテマネーは「別どり」しよう
ラテマネーを節約してできたお金は、そのまま普通預金口座に入れておくと、うっかり使ってしまう可能性もあります。西山さんは、「『貯蓄専用口座』として別の銀行口座を開いて移すなどして『別どり』しましょう」とアドバイスします。
「ラテマネーを見直して貯まり始めたお金をもとに、投資にもチャレンジしたい人がいるかもしれません。その場合、よく利用するお店や応援したい会社などで、株式優待制度のある会社の株式を買うという選択肢もあります」(西山さん)
株主優待制度とは、企業が株主に自社の製品や店舗で使える優待割引券などをプレゼントしてくれる特典です。株主優待制度を実施する会社に投資をして株主になることで、その会社を応援できるだけでなく、プレゼントというお得も受取れます。
※株主優待はすべての株式会社が行なっているものではありません。また、株主優待を受けるには保有株式数、保有期間などの条件があります

「ただし、株式投資は、預貯金のように元本が保証されているわけではありません。買ったときよりも株価が下がった場合には、損失を被ることもあります。ネットやテレビ、雑誌などで誰かが『この銘柄がいい』と言っていたからといって、すぐに買うことは避けましょう。自分が応援したい会社やよく利用しているお店を運営する会社の株式であっても飛びつかず、しばらく株価の動きを見てから投資することを心がけたいものです」(西山さん)
※企業の業績などにより株主優待の内容が変わったり、廃止されたりすることがあります
利益の一部を「配当金」として受取れる会社も
会社によっては、稼いだ利益の一部を「配当金」として株主に分配してくれるところもあります。
「東京証券取引所の市場第一部に上場する企業全体の配当利回りの平均は年率1.84%(2021年9月の加重平均利回り)です。仮に10万円投資したとすると、1,840円もらえる計算になります。企業によっては、配当利回りが5%以上のところもあります」(西山さん)
※税金などの費用は考慮していません
株式投資では元本は保証されていませんが、こうした配当金も見逃せない魅力といえそうです。
※企業の業績などにより配当金は変動することがあります

投資信託の積立なら月々100円から始められる
株式投資には、ある程度まとまったお金が必要なことも多いのですが、投資信託の積立であれば、月々100円から始めることもできます。これなら、ラテマネーを節約してできたお金で、すぐにでも始められそうな「別どり」です。
ここで紹介した投資信託の積立とは、指定した投資信託を毎月一定金額ずつ自動的に買っていく投資の方法です。
例えば、毎月1万円ずつ、20年間投資信託を積立てて、仮に年率1%で運用ができたと想定しましょう。その場合、20年後には約266万円になる計算です(図表1)。もしも3%で運用することができたら、約328万円にふえることになります(図表2)。
※上記の運用成果は大和証券「カンタン!つみたてシミュレーション」で試算したものです。シミュレーションは手数料・税金等を考慮していないため、計算結果は実際の投資結果と異なります。
「別どりで貯蓄や運用を始めて成果が見えてくると、楽しくなってくるはずです。そのときには、ラテマネーの節約からステップアップして、家計全体を見直してお金を積極的に貯蓄したり、運用したいと考えるようになるでしょう」(西山さん)
目標があれば、モチベーションもアップする
「5年後には◯◯万円を用意して、海外旅行をしたい」、「結婚資金として3年後までに◯万円を準備したい」などの目的がある場合は、目標額から逆算して月々の積立額を決める方法もあります。明確な目的があれば、お金を貯め、ふやすモチベーションも高まるはずです。
「貯金の場合には、決めた金額をコツコツ貯めれば目標を達成できます。投資信託の積立の場合には、そのときどきの相場環境などによって、目標とする時期より早く達成できる可能性もある一方、目標の時期に金額を達成できていない可能性もあります。達成できていない場合には、その金額の範囲で楽しめるプランに変更することを考えましょう。目的が旅行ならば、時期を先送りにするという方法もありますね」(西山さん)

使う時期に合わせて、運用する商品を変える工夫も必要だと西山さんはアドバイスします。
「例えば、3年後に使う予定のあるお金は、定期預金や個人向け国債など元本確保型の商品を利用するのがいいでしょう。10年以上使う予定がないお金の場合には、投資信託の積立などでふやすことも考えられます。また、貯蓄や運用にまわすお金は、ひとり暮らしならば手取りの1割程度、共働きなら手取りの2割程度、実家暮らしならば4割程度以上を目安にしたいものです」(同)
いずれにしても、最初の一歩を踏み出さなければお金を貯め、ふやすことはできません。まずは、明日といわず今日からラテマネーの節約を始めて、無理のない範囲でお金を貯め、ふやしていきましょう。
取材協力
西山 美紀さん
貯蓄法や子育てにかかるお金の貯め方などをテーマに、女性誌やビジネス誌で活躍。出版社に勤務し、編集・マーケティングに携わった後、2005年にフリーライターとして独立。ファイナンシャル・プランナーの資格を取る。新著『お金の増やし方』(主婦の友社)発売。
取材・執筆/大山 弘子
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