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「SDGs」をもとに行動すれば世界は変わる!国連採択の目標を第一人者の蟹江教授に聞きました


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    蟹江憲史教授(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科)、国連大学サステイナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー。 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程、北九州市立大学講師、助教授、東京工業大学大学院社会理工学研究科准教授などを経て現職。日本政府「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部円卓会議」委員、内閣府「自治体SDGs推進評価・調査検討会」委員、環境省持続可能な開発目標(SDGs)ステークホルダーズ・ミーティング構成員など多くの公職を兼務。

    <主な著書>:『SDGsと環境教育』(学文社,2017年編著)、『持続可能な開発目標とは何か』(ミネルヴァ書房,2017年編著)、『Governing through Goals: Sustainable Development Goals as Governance Innovation 』(MIT Press, 2017、共編著)、『未来を変える目標 SDGsアイデアブック』(Think the Earth, 2018, 監修)など


    子どもたちにもっと素敵な未来を残したい。そう願う親世代に知ってほしい、そして行動に移してほしい考え方が「SDGs(Sustainable Development Goals)」です。これは社会のさまざまな矛盾や課題を解決し、未来を変えていく「持続可能な開発目標」の意味。貧困や格差の解消、教育や保健の充実、ジェンダー平等の実現など、世界中で取り組み、達成すべき目標(ゴール)として、2015年の国連総会で採択されました。これらを達成するには、私たち一人ひとりの行動が必要と考えるSDGs研究の第一人者・蟹江憲史教授に、「SDGsとは何か」、「SDGsの達成に向けて私たちが今日からできること」などを伺いました。

    SDGsで世界はどうなる?私たちが取り組むべきことは?

    「SDGsのことを、私は『未来のカタチ』と言っています。理念で終わるのではなく、現実の中で実現すべきことだからです。このSDGsが目指すのは、戦争や紛争がなく平和で、不平等がなく誰もが自分の力を発揮して伸び伸びと生きることができる(=誰一人置き去りにしない)、持続可能な世界です。皆さんが子どもたちのために何を残したいのか。どんな社会にしたいのかを考えれば、おのずとSDGsが目指す世界がイメージできると思います」と、蟹江教授。

    しかし、これだけ壮大で数多くの目標を達成するために、個人レベルで何かできることはあるのでしょうか?そんな疑問に対し、蟹江教授は私たち一人ひとりが考えや行動を変えることがSGDsの達成につながるのだと言います。

    「例えばプラスチックストローを使わないことやエコバッグを持ち歩くことも、廃棄物を減らすという点でSDGsに貢献します。余分なエネルギーを使わないために電球をLEDに替えることもそうですね。他には、女性の働きやすさを確保するために、共働き家庭の家事分担を見直すこともSDGsに繋がる事例です。このように、これまでやっていたことも含めて身近でできることはたくさんあります」

    蟹江教授によれば、国連がSDGsの広報活動として出している「持続可能な社会のためにナマケモノにもできるアクション・ガイド」には、ソファに寝たままでも、家の中にいてもできる、世界を変えるための身近な取組の例が紹介されているそうです。こうしたガイドなども参考にしながら、できることを今日から始めることが、「自分事」としてSDGsに貢献する最初の一歩につながりそうです。

    「教育制度改革を受けて子どもに考えさせる学習が主流となる中、SDGsの問題というのは、子どもの思考力を鍛えてくれる良い題材だと言えるでしょう。例えば、SGDsの中には『フードロスを半減させる』という目標があります。この問題に子どもが取り組めることを親子で話してみるのはどうでしょうか。ご飯を半分残していたのを残さないようにするというアイデア。あるいは、支援団体を通じて食べ物に困っている人へ『おすそわけ』することもできます。こうすれば個人単位でフードロスを半減させることができるのです。親子でこういった意識が高まれば、必要以上の食べものを買った挙句に捨てるといったことも減っていきますます好循環が生まれていくでしょう」

    自治体も積極的に取り組み始めた、SDGsの17の目標

    「前述のとおり、SDGsには『誰一人置き去りにしない』世界を作るという大きな国際目標があります」と蟹江教授は続けます。

    誰一人置き去りにしないという点で、SDGsで特に重視されるのが貧困をなくすことです。世界には、世界銀行が定める国際貧困ラインである1日1.9ドル未満で生活している人が7億人以上もいます(世界銀行による2015年データ)。貧困とは最低限の栄養、衣類、住まいのニーズが満たされない状況のことで、当然、医療や教育を受ける余裕もありません。そのため、貧困が次の世代にも連鎖するという負の流れが生まれ、貧困層の固定化につながります。これは差別の原因にもなり、教育や仕事の選択肢が奪われ、生活がもっと苦しくなることを意味します。また、日本のような先進国にも、こどもの貧困や相対的貧困と言った貧困の問題はあります。

    さらに地震や洪水、干ばつなどの自然災害が起きると、たくさんの人が生活基盤を失い、新たな貧困層を生み出しかねません。貧困をなくすという目標には社会制度だけでなく、地球や自然環境まで視野に入れて考えることが求められるのです。

    「より良い未来のためには、貧困に終止符を打つ必要があります。そして、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることが大切です。SDGsでは、この課題を17の目標にまとめ、その下により具体的な目標である169のターゲットを設けました。これらを先進国も開発途上国も一体となって取り組むことが求められています。17の目標と169のターゲットは、法的な義務を持つ取り決めではなく、自主的な取組を促すための目標です。やり方に決まりやルールはなく、私たち一人ひとりができるやり方で取り組むことが求められているのです」

    17の目標(ゴール)は、国連によりそれぞれのアイコンとともに以下のようにまとめられています(下図)。

    先ほど紹介したLEDへの交換により無駄なエネルギー消費を削減するといった個人の行動は、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」につながるでしょう。廃棄物を減らすことは目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標12「つくる責任使う責任」のほか、目標13や14、15のような自然環境にも関連する行動にもなります。

    もちろん自治体や企業もSDGsの推進に取り組んでいるそうです。例えば、吉本興業では国連広報センターと連携し、よしもと芸人によるSDGsのPRムービー「SDGsについて考えはじめた人々」を制作・上映するなど笑いで楽しく、わかりやすくSDGsを広める取組を行なっているとのこと。

    「自治体の例では、内閣府がSDGsを推進する『SDGs未来都市』として29都市を選び、その中から『自治体SDGsモデル事業』として10事業を選定するなどの取組が始まっています」

    自治体SDGsモデル事業では「環境を生かし、資源、経済が循環する『サスティナブルタウンニセコ』の構築」を進める北海道ニセコ町や、「LRTネットワークと自立分散型エネルギーマネジメントの融合によるコンパクトシティの深化」を掲げる富山県富山市など、地域の魅力・特性を生かしつつ、SDGsの推進を図るものが選ばれています(2018年6月発表時点)。

    「まだ数は少ないですが、選定された自治体に住むこともSDGsを進めることにつながると言えます」

    SDGsを指針に商品やサービスを選ぶことで企業を応援する

    社会・経済・環境の問題を統合的に解決することを目指すSDGsでは、商品やサービスを生み出す企業と、それを利用する消費者が意識と行動を変えることも必須です。そのためには「社会や環境に貢献できる『エシカルな消費』をすることも、ひとつの方法です」と蟹江教授は言います。

    「エシカル消費(倫理的消費)」とは、人や社会、地球環境に配慮した倫理的に正しい消費を行なうことをいいます。農薬や化学肥料を使わずに栽培したオーガニックコットンの服や小物を買うこと、不当な条件下での労働や児童労働など誰かの生活を犠牲にせずに生産された「フェアトレード」のチョコレートやコーヒーなどを買うことなどもそのひとつです。

    「そうしたお店を探して利用するだけでなく、自分がよく利用するお店に、オーガニックコットンの服や小物、フェアトレードのチョコレートやコーヒーを扱って欲しいとリクエストすることも『エシカル消費』を広めることにつながるでしょう」

    そのほかSDGsを推進する企業に投資する方法もあると蟹江教授。一般的に投資家は売上げや利益などの業績が好調で、その企業に出資することで株価の値上がりや配当金などの見返りが期待できる「いい会社」を選んで投資してきました。しかし、そうした企業も持続可能ではない経営を行なっていたら、長く存続することは難しいかもしれません。

    「すべての国が賛同するSDGsを目標とした時代においては、SDGsに沿った経営を行なう会社が、『いい会社』の基準と言えるのではないでしょうか。例えば、地球温暖化対策に取り組んでいたり、女性社員が活躍していたりといった会社を『いい会社』と判断し、投資して応援することを考えてみてはどうでしょうか」

    SDGsに照らして「いい会社」と判断できるところを選ぶのが難しければ、女性が活躍する企業を投資対象にしたファンドや、社会的な課題の解決にあたる革新的な技術やビジネスモデルを有する企業を投資対象にしたファンドなどを活用するという選択肢もあります。

    「SDGsは2030年の目標です。短期的な、目先の目標ではありません。そのため、SDGsに照らし合わせて『いい会社』に投資しても、その会社の株価がすぐに上がるとは限りません。でも、世の中は確実にその方向に向かっていくでしょう。長い目で見れば、その会社が成長し、投資したお金も成長する可能性があります。結果的に『いい会社』への投資が得をする事になっていくように思います」

    私たち自身がSDGsにつながる取組を始めるとともに、それを実践する会社を投資という形でも応援することで、「誰一人置き去りにしない」世界を実現する一歩を踏み出してみませんか。

    取材・文:ファイナンシャル・プランナー 大山弘子

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