西口晃平の「ファンダメンタルズ分析」講座 みなさん、こんにちは!債券ストラテジストの西口晃平です。情報は世の中に溢れていますが、今のマーケットのテーマを見極め、今後の展開を予想するのが「ファンダメンタルズ分析」です。そのノウハウを分かりやすく解説します! 西口晃平の「ファンダメンタルズ分析」講座 目次

みなさん、こんにちは!債券ストラテジストの西口晃平です。情報は世の中に溢れていますが、今のマーケットのテーマを見極め、今後の展開を予想するのが「ファンダメンタルズ分析」です。そのノウハウを分かりやすく解説します!

【第4回】市場心理との上手い付き合い方

【第3回】期待と現実の変化を捉える:株価=EPS×PERでは、株価をPERとEPSに分解できるように、マーケットの展開は「期待」と「現実」の両者の変化を捉える必要があるとご紹介しました。

ファンダメンタルズ分析講座【第4回】では、「期待」の変化をどう捉えていくのか、についてみていきます。

市場心理を上手く捉えて、投資成果につなげていきましょう!

市場心理を捉えることが投資成果につなげるカギ!

ケインズの美人投票

私たちが投資してみようかな、と考えるのは、投資をすることで儲かると思うからですよね。
マーケットには、良いときもあれば悪いときもあります。
市場心理を上手く味方につけることができれば、高値掴みをしてしまうリスク(周りが良いと言っているから買ってみたらだめだった…)や、せっかくのチャンスをふいにするリスク(周りが悪いと言っていたから買わなかったら、その後すごく値上がりした…)を回避することができます。

マーケットの特徴をたとえる言葉に、「ケインズの美人投票」というものがあります。
有名な言葉ですので、耳にしたことがある方も多いかもしれません。

ジョン・メイナード・ケインズは経済学に多大な貢献を残した経済学者ですが、彼はマーケットを一風変わった美人投票のようなものだと説明しました。
通常の美人投票であれば、自分が一番美人だと思う候補に投票します。しかし、市場参加者は、他の人の票が一番集まりそうな候補は誰なのかを考えて投票する、というのです。

株への投資であれば、他の人も投資したくなる銘柄はどれなのかを考えて、自分は一足先回りして投資しておく。そして、他の人の投資資金が後から入ってくれば、自分は値上がり益を享受できる…そのため、市場心理は私たちの投資の成果に大きく影響します。できることなら、常に他の投資家の先回りをしたいものですよね。ただ、どんな投資家であっても、たとえそれが長らくマーケットに携わっているプロであったとしても、百発百中で先回りすることなんてできません。理由は単純、将来のことは誰にも分からないからです。

足元で起きている同じ材料をとってみても、良い解釈をする人もいれば、悪い解釈をする人もいます。そのバランス次第で、その瞬間の市場心理はどちらにも振れる可能性があります。
ただ、その瞬間の市場心理が常に正しい判断を下しているとは限りません。
本来は良い材料だったとしても、その時の市場心理が弱気に傾いているときには、その場の雰囲気に流されて悪い材料と捉えてしまうケースや、その逆のケースもあるからです。

だからこそ、私たちは市場心理と付かず離れず、上手い距離感をとる必要があります。市場心理が正しい解釈をしていると思うときには自分も大勢のうちの一人として「順張り」でついていきます。
逆に市場心理の解釈に違和感を覚えるときは、少数派として果敢に「逆張り」で攻めるべきです。

メインシナリオを持とう!

では、市場心理との距離感は、どのようにとっていけばよいのでしょうか?
この時、私が普段心がけているのは、自分の考えと市場心理の共通している点、違う点を洗い出してみることです。

まず、今後のマーケットの方向性を左右する材料を、ノートにでもなんでもかまいませんが、できるだけ多く書き出してみましょう。
そしてそれらの材料を、良いシナリオ・悪いシナリオのように、今後想定できるいくつかのシナリオにまとめてみてください。

その上で、今手元に揃っている事実の良い面・悪い面の両方を勘案した上で、一番打たれ強いシナリオはどれなのか?を考えてみましょう。

一つの企業をとってみても、良い面・悪い面の両面が必ず存在します。
その両面を比較勘案した上で、全体としてのバランスは今後どちらに傾く確率が高いか?を考えます。
経営学などでは、SWOT分析として、企業の強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)、外部環境の機会(Opportunities)・脅威(Threats)にわけて整理する方法がよく採られますよね。

日本経済を例に考えてみましょう。
今、日本経済には2つのシナリオが想定できます。
  • (1)「低成長・低インフレ継続シナリオ」
    バブル崩壊後の「失われた20年」とも呼ばれる冴えない展開が今後も続く。
  • (2)「デフレ脱却シナリオ」
    アベノミクスをきっかけに、日本経済が再び高成長・高インフレを取り戻す。
日本の名目GDP 日本の名目GDP
出所:IMF

このどちらが正しいのでしょうか。2018年1月時点では、まだ決着がついていません。
過去最高を更新する企業業績や、企業景況感・消費者心理の明るさなどからは、「失われた20年」が続いているとするには違和感があります。

一方で、インフレはいまだに日本銀行が目指す2%には届いておらず、私たちの所得も伸び悩んでおり、デフレ脱却シナリオに転換したとも言い切れません。

こうしたどっちつかずの状態で、どちらのシナリオが自分としてしっくりくるでしょうか?
これは、先ほどノートに書き出してみた材料から、自分が納得できるシナリオはどちらなのか?を検証していくことになります。

検証1
バブル崩壊後に日本企業が慎重な行動を採るようになった、「3つの過剰」(※雇用・設備投資・債務の3つがそれぞれ、事業規模対比で多すぎる状態)の状況は現時点でどうなっているのか?

検証2
デフレ脱却のカギを握る、「前向きの循環」(企業業績改善→設備投資拡大+雇用・所得の改善→消費の拡大→企業業績改善→…)の状況はどうなっているのか?

こうした検証を繰り返しつつ、(1)「低成長・低インフレ継続シナリオ」(2)「デフレ脱却シナリオ」に重み付けをしていきます。

日本経済2つのシナリオ
(1)低成長・低インフレ継続
シナリオ
  • 低成長・低インフレ・低金利の組み合わせが継続
  • 家計・企業の慎重な行動はバブル崩壊後に「染み付いたもの」
  • 構造的要因(財政・少子高齢化・生産性の低下)を解決する必要
  • 痛みを伴う構造改革?
(2)デフレ脱却シナリオ
  • デフレ脱却を遂げ、日本経済は経済と財政の持続可能性へ一歩近づく
  • 企業は「3つの過剰(設備・雇用・債務)」のリストラにメドをつけ、攻めの経営戦略に転じる
  • 前向きの循環(企業業績改善→投資拡大+雇用・所得の増加→消費の拡大→企業業績改善→…)
出所:大和証券作成

そして、どちらかのシナリオを自分のメインシナリオとしてください。

その上で、今マーケットで語られているシナリオとして、どちらをメインシナリオとして想定している人が多そうかを、「ケインズの美人投票」のように推測してみてください。足元の材料が弱いものばかりであれば、市場参加者は(1)を支持する人が大半となるでしょう。一方で、そこから徐々に強めの材料が目立ちはじめるようになれば、徐々に(2)を支持する人が増えてくることになります。
そして、実際に日本経済がデフレ脱却を遂げた時点で、(2)への支持が大半となるでしょう。(1)を支持する側にとってみれば、(2)の考え方に反論する必要がありますし、逆も同様です。そのせめぎあいが、どちらに優勢に傾くか。市場心理は、両側に行きつ戻りつを繰り返しながら、最終的には説得力の高いシナリオを支持することになります。

そして、自分がメインシナリオとしていたところに、
市場心理が擦り寄ってきたとき…、
一足先回りして投資していた商品が成果を挙げているはずです。

新聞から読み取る市場心理の揺らぎ

今、市場心理はどのあたりにあるのだろうか…?
それを把握するのは簡単ではありませんが、おおよその居所を掴むことはできます。
その際に手がかりになるものが、新聞(ニュース)です。

新聞にはさまざまな情報が掲載されており、今後の投資を考える上でも貴重な情報源となります。市場心理を把握する上では、「今後の見通し」「業界動向展望」といった形で、色々な人が考えを述べているような記事が参考になります。

先行きに関して、強気・弱気、両者の見方が巷にはあふれています。
それを読む際に、これは誰の発言なのかを気にしながら、情報をふるい分けするようにしてみてください。
市場参加者の発言なのか、それとも企業経営者の発言なのか。
ここに乖離が生じているときは、投資のチャンスです。
市場参加者の発言は、往々にして他の市場参加者の見方に引きずられることがあります。そのため、実際に起きていることよりも、楽観的・悲観的に振れすぎる傾向があります。
一方で、企業経営者は自らの企業が直面する経済・事業環境をふまえての発言をしますので、こちらが実際の経済をより良く反映していることが多いです。

例えば、2017年の8月・9月には、北朝鮮関連のヘッドラインが報道を賑わせ、市場でも悲観的な見方が増えました。ただ、投資をする上で重要なのは、この時に企業経営者の中で地政学リスクを背景に事業を中断したという人がいたかどうかです。

下記チャートの赤点線の部分を見てください。リスクオフ局面で、青線の日経平均株価が落ち込んでいる一方、赤線の鉱工業生産指数は増加トレンドを維持していました。この乖離が投資のチャンスです。

鉱工業生産指数」は、多くのエコノミストが最重要視する指標です。これは製造業の活動状況を示すものですが、景気循環との連動性が非常に高く、今の日本経済の状況を捉える上で便利な指標です。2017年の日本では内需・外需ともに堅調な成長が続いていたため、実際の生産活動は活況が続きました。

つまり、市場での北朝鮮リスクを警戒する売りは悲観的に振れすぎていると判断でき、2017年はこういったリスクオフ局面」では、日本株は一貫して「押し目買い」が有効でした。

日経平均株価と日本の鉱工業生産 日経平均株価と日本の鉱工業生産P
出所:日本経済新聞、経済産業省
「リスクオフ局面」でも一喜一憂せずに、
現実を分析することが大事です!

一方で、マーケットは経済の先行きに対する炭鉱のカナリア」となるケースもあります。
マーケットには多くの人が参加していますので、市場参加者の中でもいち早く現実の変化に気づく人がいることがあるからです。
この場合、自分が現時点では説得性が高いと考えていたはずのシナリオと違う方向へと市場心理が傾いていき、後から現実がそちらを裏づけしていくことになります。こうした読み間違いをできるだけ無くしていくことが、より良い投資成果につながっていきます。

自分の考えと市場心理に乖離が生じている場合、
どちらの説得力が高いか?そこが投資機会にもなりますし、
自分の考えを改めるきっかけにもなります。

自分の考えと市場心理の根競べ

自分の考えと市場心理が乖離している時、自分の考えは間違っているのかな…?という不安に駆られます。仮に自分が間違っていた場合、その間違いを認めずにいた時間の分だけ、傷口が広がるからです。それでも自分の考えのほうが、説得力がある…と耐える場合は、市場心理が擦り寄ってくるまでの根競べになります。

そうした場合、どれくらいの期間で投資戦略を練り直せばよいのでしょうか?これは論点となっているテーマの大きさにもよるので、一概には言えませんが、1カ月〜3カ月程度が、一旦自分の考えを整理しなおす一つの目安になるのではないでしょうか。1カ月としたのは、企業の月次販売報告が手に入ることや、経済指標は月1回のペースで公表されるものが多いことからです。3カ月としたのは、企業の四半期決算や、GDP統計などの四半期毎に出る経済指標があるからです。こうした、新たに手に入った情報をふまえた上で、自分の考えを変更する必要はないか?を検証します。そうした作業を他の市場参加者も行っているため、新しい材料が出ることで市場心理のバランスが変化し、それにつれてマーケットも変化することになります。

今回前半で取り上げた、日本経済は今後、(1)「低成長・低インフレ継続シナリオ」を進むのか、それとも(2)「デフレ脱却シナリオ」を進むのか、というテーマ。
これは、日本経済が「失われた20年」の暗さを払拭できるかどうかという、非常にスケールの大きなテーマですので、1カ月や3カ月の材料で決定打が出るわけではありません。ただ、足元の日本経済が明るさを強めていけば、(2)「デフレ脱却シナリオ」の支持率が高まっていくことになります。

現時点では、残念ながら(1)「低成長・低インフレ継続シナリオ」がまだ市場参加者のメインシナリオです。
日本銀行は現在デフレ脱却に向けて大規模な金融緩和を実施しています。その中でも、インフレが安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続すると約束しています。このインフレが安定的に2%を超えることが達成できるかどうかに関して、2017年12月にBloomberg社が行ったエコノミスト調査では、「はい」と答えたのは34%、「いいえ」と答えたのが66%でした。日銀は「物価安定の目標」として、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率2%と定めています。2017年11月時点で、CPI(除く生鮮食品)は前年比+0.9%であり、今後も1%程度の上昇にとどまる、というのがエコノミストの予想平均です。こうした見方が正しければ、日銀が「物価安定の目標」を達成したとはいえず、今後も金融緩和が継続することになります。

消費者物価指数、除く生鮮食品 消費者物価指数 、除く生鮮食品
出所:総務省、Bloomberg
日本のインフレ率
日本でインフレが安定的に2%を超える状況は、
まだ実現していません。今後、経済の明るさはインフレにまで波及するのでしょうか?

まとめ

  • 投資のチャンスを捉える

    市場心理は行きつ戻りつを繰り返しながら、最終的には説得力の高いシナリオを支持する。市場心理は楽観的・悲観的に振れすぎる傾向があるので、それに一喜一憂することなく、投資のチャンスと捉えよう。市場参加者の発言と企業経営者の発言に乖離が生じているかどうかが、一つの目安。

  • 自分の考えと市場心理を検証

    今後のマーケットの方向性を左右する材料を良い面・悪い面の両方勘案した上で、自分の考えと市場心理、どちらの方が納得性が高いのかを検証しよう。1カ月・3カ月が検証する頻度の一つの目安だが、テーマによっては長期戦となることも。

次回もお楽しみに!

今回の講座では、市場心理との上手い付き合い方をご紹介しました。今回ご紹介した考え方は、マーケットは上下に振れながらも、いずれ「現実」を正しく反映するという見方に基づいています。つまり、投資で成果を得るためには、「現実」を正しく認識する必要があります。
次回は、「現実」の分析の仕方について見ていこうと思います。

私がお届けするこちらの動画もご活用ください!

The Dealer’s Viewでは、みなさんが「ファンダメンタルズ分析」をする上での案内図として、今のグローバル経済・マーケットがどういったことを考えているのか、これからどこへ向かおうとしているのか、(原則)毎月動画でお届けしています。ぜひ、より納得して投資する上でのサポートとして、ご視聴ください。

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