西口晃平の「ファンダメンタルズ分析」講座 みなさん、こんにちは!債券ストラテジストの西口晃平です。情報は世の中に溢れていますが、今のマーケットのテーマを見極め、今後の展開を予想するのが「ファンダメンタルズ分析」です。そのノウハウを分かりやすく解説します! 西口晃平の「ファンダメンタルズ分析」講座 目次

みなさん、こんにちは!債券ストラテジストの西口晃平です。情報は世の中に溢れていますが、今のマーケットのテーマを見極め、今後の展開を予想するのが「ファンダメンタルズ分析」です。そのノウハウを分かりやすく解説します!

【第3回】期待と現実の変化を捉える:株価=EPS×PER

【第1回】この壺、いくらで落札される?では、投資をする上では「ファンダメンタルズ分析」と「需給分析」の両方が大切だとお伝えしました。

まず、「ファンダメンタルズ分析」でその投資商品のストーリーに共感できるのかを判断する。次に、「需給分析」で適切な価格水準を考える。今、マーケットはどういったストーリーを描いているのか、自身の考えるストーリーに共感する人が今後増えてくる可能性はどれほどか。

ファンダメンタルズ分析講座【第3回】では、この流れをふまえて、実際に日経平均株価を分析してみましょう!

日経平均株価を分析してみましょう!

日本株への海外投資家の注目が戻りつつある

2017年10月、日経平均株価史上初となる16営業日連続での上昇を記録し、11月には26年ぶりとなる23000円台を回復しました。これには、衆院選で与党が大勝したことや、海外株式市場が堅調な展開となっていることなどが指摘されます。

ただ、今回の上昇局面では、為替が円高に振れた日でも、海外株式市場が軟調だった日でも、日本株は上昇しました。ここからは、マーケットに日本ならではの強さが評価されていることがうかがえます。

日本ならではの強さとは、具体的に何を指すのでしょうか?

2017年9月に開催された経済財政諮問会議において、安倍首相は以下のように発言しています。

「先般、ニューヨークにまいり、4年ぶりにニューヨークの証券取引所で講演した。また、その前日には、最も主要な投資家と10名ずつ、朝食会を1日で2回やったのだが、私からアベノミクスの今までの政策の成果、あるいはこれからやろうとしていることについて、お話をさせていただいた。」

4年前に講演をしたときには、言っていることは良いけれども、本当にできるのかという雰囲気が蔓延していた。」

「しかし、4年後、今回行ったところ、日本の状況とは違って、ほぼ全員が我々の経済政策を称賛していた。自分たちはずっと日本を見てきたが、20年間投資をするのをやめようと思っていたけれども、この4年間の変化というのは、今まで自分たちが経験していなかった変化であり、日本人が最も不得意とするスピード感が全く違ったという評価をいただいた。」

この20年間日本株への興味を失っていた人たちが、ここに来て再び日本に目を向け始めているというのが、大事なポイントです。日本はバブル崩壊以後、「失われた20年」を経験し、海外投資家の間でも日本は「成長しない国」というレッテルを貼られてしまいました。それが、日本経済にデフレ脱却の兆しが出てきており、「失われた20年」がいよいよ終わるのではないか?という点を、海外投資家が評価し始めています。

今回の日経平均株価の16連騰は、そうした非常に大きな相場の転換点を象徴するものである可能性があります。

株価=現実(EPS)×期待(PER)

株に投資する際、よく「割高」・「割安」という言葉を使いますよね。
これって、何に対して「割高」・「割安」と言っているのでしょうか?
答えは、企業の稼ぎ出す利益という「現実」に対して、市場の「期待」がどれだけ上乗せ・割引されて価格がついているのか、を考えることになります。

株価は、「一株あたり利益(Earning Per Share, EPS)」と「株価収益率(Price Earnings Ratio, PER)」に分解することができます。

荒い捉え方ではありますが、

  • ・一株あたり利益
    (Earning Per Share, EPS)=現実
  • ・株価収益率
    (Price Earnings Ratio, PER)=期待

と言い換えられます。

株価の動き方には、いくつかのパターンがあります。
❶期待先行で現実が追いついていくパターン、❷現実がじわじわと期待を変えていくパターン、❸現実が急変し、期待が急速に失われるパターン、などです。

株価の動き方(パターン)

最近の期待先行で現実が追いついていくパターンの事例としては、2017年2月のトランプ米大統領就任後の米国株高、3月の割高警戒による調整局面、その後の反発が挙げられます。2017年1月20日の大統領就任直後から、トランプ大統領はさまざまな大統領令に署名し、政権公約の実現に向けて急発進しました。「決められる政治」への期待が高まり、米国株はPER主導で大きく上昇しました。

ところが、下院共和党がオバマケア改廃法案について党内での意見集約に失敗すると、米国政治が結局これまで同様の「決められない政治」のままではないのかとの懸念が広まり、米国株は割高警戒から調整局面となりました。ただ、その間も米国企業のEPSは着実に増えていたため、時間の経過と共に割高感は解消され、大きな調整を経ずに株価は持ち直すことができました。

2017年2月以降の米国株(S&P500)のEPSPER 2017年2月以降の米国株(S&P500)のEPS・PER
出所:Bloombergより大和証券作成
こちらは、期待先行で現実が追いついていくパターンの事例です。
2017年2月の米国株は、トランプ政権に対する「期待」先行で相場が上昇しました。ただ、その後「期待」がやや失われたものの、EPSという「現実」が着実に増えていたため、米国株の堅調な展開は続きました。

リスクオン / リスクオフは役に立たない

巷にあふれるマーケット解説では、リスクオンリスクオフという言葉が時折登場します。

リスクオンとは、マーケットにとって好ましい材料が出てきたことで、投資家がリスクをとることに意欲的になることを指します。お金が安全資産とされる国債から、株や海外資産に流れ、円安・株高になる傾向があります。

その反対がリスクオフで、例えばどこかでミサイルが発射されたといった報道が出ることで、投資家がリスクをとることに消極的になり、円高・株安となる傾向があります。

こうしたリスクオン/リスクオフという言葉は、その瞬間の動きを簡易的に捉えるには便利な方法です。
ただ、3カ月・1年・それ以上といった、長い期間での投資戦略を考える際には、まったく役に立ちません。

リスクオンリスクオフだけでマーケットの変動を説明しようとした場合、このようなイメージ図になります。
それまでのリスクオン・リスクオフの材料がどれだけ多かったかによって、マーケット変動が積み重なり、結果としてマーケットの波ができている、といった捉え方になります。

リスクオンリスクオフによるマーケットの解釈 リスクオン・リスクオフによるマーケットの解釈
最近いいことあった?ついてなかった?
子供の機嫌をうかがうのと似ています。本質的な分析とは言えません。

マーケットを動かしている材料はすべて白黒しかない、それほど単純なものではありません。一つの材料をとっても、その背景には過去の流れ、今後の展開に対する関係者の思惑など、さまざまなものが絡み合っています。
例えば、今回の衆院選で与党が大勝したことを受け、週明けの日本株は上昇しました。この事実だけを捉えると、与党大勝というマーケットにとって好ましい材料によるリスクオン、と説明することができます。

ただ、

  • 与党が大勝することになった理由はなぜなのか?
  • 今後打ち出される政策は、どういった影響を受けるのか?
  • そもそも日本株が選挙前までで既に14連騰していた背景は何なのか?

といったことを分析しなければ、今日本株は買うべきなのか?という疑問に答えることはできません。

リスクオン/リスクオフは、
その瞬間の動きを簡易的に捉えるには便利な方法。
長い期間での投資戦略を考える際には、まったく役に立たない。

大きな流れを捉える

世界最大規模のヘッジファンド創業者である、レイ・ダリオ氏は、「経済は機械のように動く」と述べています。
例えば、海外経済が好調で、受注が伸びているようなとき、企業は生産量を増やすために、設備投資をして生産ラインを拡張する、もしくは新しく人員を採用するといった行動をとります。そうした前向きな行動が国全体で広がると、新たなビジネスチャンスが生まれる機会が広がります。
一つの国の経済は、他の国の経済と密接に連動していますし、その国の中でも、生産・輸出入・在庫サイクル・雇用…といった各種の経済指標が連動しています。
そうした経済の動きをふまえ、金融政策や財政政策が調整され、それらがマーケットに大きな流れを生み出していくことになります。

マーケットを分析する際に最も大事なことは、この大きな流れが今どちらに向かっているのか?を捉えることです。この流れをふまえた上で、実際のマーケットの動きはそれに沿ったものになっているのか、それとも逆らった動きになっているのか?を見極めます。大きな流れと実際のマーケットの動きが一緒になっている場合は、「順張り」が適切です。

一方で、大きな流れに対して実際のマーケットの動きが逆になっている場合は、いずれマーケットが大きな流れに沿ったところへ戻ってくるだろうと考えて、逆張り」するチャンスになります。

大きな流れを踏まえたうえでのマーケットの解釈 大きな流れを踏まえたうえでのマーケットの解釈
経済や企業業績、金融政策・財政政策は、一つの大きな流れに沿って動いています。
その大きな流れを踏まえていれば、今「順張り」すべきか、「逆張り」すべきかの判断がつくようになります。

投資の基本動作は2ステップ

【第1回】この壺、いくらで落札される?でもご紹介したとおり、投資を考える上での基本動作は2ステップです。

  • (1)ファンダメンタルズ分析
    現実の分析、今後どうなるか?の初めの一歩
  • (2)需給分析、テクニカル分析
    期待の分析、今どこまで期待されているのか?

ファンダメンタルズ分析では、今のグローバル経済・日本経済、各国の経済政策がどのような大きな流れにあるのかを見極めます。経済の動きや、政策の展開というのは、金融危機のように急激なショックを受けた時をのぞいて、緩やかに進みます。そのため、日々変動するマーケットに対峙している市場参加者や報道関係者からは、軽視されがちなものでもあります。
ただ、大きな流れを踏まえているのとそうではないのとで、次のステップ、期待の分析(需給分析、テクニカル分析)をする上で非常に大きな差がつきます。

今回の日本株高は、日本企業の稼ぐ力が着実に改善していることが大きな流れとしてあります。
日経平均株価は、約26年ぶりの水準を回復しました。
ただ、その間に日本企業は当時の2倍以上の利益を稼ぐようになっています。
法人企業統計によると、日本企業は1991年度に約33兆円経常利益を上げました。それが、2016年度は約74兆円です。
「株価=EPS×PERの関係からすると、当時と比較してEPSは半分以下になっているということです。

今、日本経済には前向きの循環が周り始めている兆しが見られます。企業利益はその起点になるもので、企業利益が一段と設備投資や賃上げに振り向けられるようになると、今はまだら模様にとどまっている個人消費にも明るさが目立つようになってきます。今後も、企業利益には明るい展開を期待したいものです。

日経平均株価と日本企業の経常利益 日経平均株価と日本企業の経常利益
出所:日本経済新聞、財務省
日経平均株価は約26年ぶりの水準!ですが、その間に日本企業の経常利益は2倍以上に増えています。
今、日本の大きな流れは上向き、しかも勢いを強めています。

まとめ

  • 「期待」と「現実」の変化を捉える

    株価をPERとEPSに分解できるように、マーケットの展開は「期待」と「現実」の両者の変化を捉える必要がある。「現実」は、ファンダメンタルズ分析によって、「期待」は、需給分析テクニカル分析によって捉える。

  • 大きな流れを捉える

    その中でも、「現実」の大きな流れを捉えることが最も重要。大きな流れを踏まえていれば、今「順張り」すべきか、「逆張り」すべきかの判断がつくようになる。

次回もお楽しみに!

今回の講座では、マーケットを分析する際、期待と現実の変化の両者を捉えることが大切だということをご紹介しました。

では、期待の変化、現実の変化は、具体的にどのように捉えていけばよいのでしょうか。次回以降は、それぞれに焦点をあてて、分析手法をお伝えしていこうと思います。

私がお届けするこちらの動画もご活用ください!

The Dealer’s Viewでは、みなさんが「ファンダメンタルズ分析」をする上での案内図として、今のグローバル経済・マーケットがどういったことを考えているのか、これからどこへ向かおうとしているのか、(原則)毎月動画でお届けしています。ぜひ、より納得して投資する上でのサポートとして、ご視聴ください。

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