エコロジー・ボンド特集
エイラ・クレイヴィ(Eila Kreivi)氏/欧州投資銀行 資本市場部 米州・アジア太平洋部門長
フィンランドのアボ・アカデミー大学経済科学修士。
ユニオン・バンク・オブ・フィンランドおよびソシエテ・ジェネラルに勤務し、商業銀行業務、デリバティブ、財務および資本市場部門を含む様々な分野に従事。1995年に欧州投資銀行に入行。現在は、欧州投資銀行の資本市場部 米州・アジア太平洋部門長として同地域通貨による資金調達を担当する。
母国語であるフィンランド語に加え、英語、仏語およびスウェーデン語にも精通している。

欧州投資銀行とは

本日は、欧州投資銀行(以下、EIB)の事業内容や2010年5月に日本での売出しが予定されている「エコロジー・ボンド」についてお話をお聞かせ頂ければと思います。まずは、EIBについて簡単にお聞かせいただけますでしょうか。
EIBは、欧州連合(以下、EU)に長期資金を提供する金融機関として1958年に創設されました。EUに加盟すると自動的にEIBの株主となる仕組みで、現在27のEU加盟国が出資しています。EIBの総務会はEU加盟国の財務相で構成されています。
EIBの使命は、「欧州連合の機能に関する条約」内のEIB法令に則り、様々なプロジェクトへの融資を通じてEU加盟諸国の統合や均衡の取れた発展、経済・社会的結束に貢献することです。
なるほど。欧州各国の発展をサポートする融資活動を行っているわけですね。では、融資の内容についてお聞かせいただけますでしょうか。
EIBは2009年に総額790億ユーロの融資案件に調印しました。EU加盟国内のプロジェクト向け融資が全体の約90%を占めていますが、EU加盟候補国やEUと協力関係にある世界各国におけるプロジェクトに対しても融資を行なっています。2009年は、90億ユーロがEU域外への投資でした。2009年の融資総額で見ると、EIBは世界最大の国際融資機関といえます。
EU域内の融資活動については6つの優先される目標があります。それは(1)経済・社会的結束、(2)研究と革新、(3)ヨーロッパ横断的な輸送・エネルギー網、(4)中小企業支援、(5)環境保護、(6)持続可能かつ競争力のあるエネルギーの確保です。
EU域外では、EUの開発政策を支援し、協力関係にある国々と、1963年以降長期にわたってパートナーシップを構築しており、(1)民間セクターの発展、(2)社会基盤の開発、(3)エネルギー供給の確保、(4)環境の持続可能性や地球温暖化防止に焦点をあてた融資活動を行っています。
年間10兆円規模の融資活動を支えるためには強固な財務基盤が必要となるわけですが、EIBはどのようにして資金調達を行っているのでしょうか。
EIBは資本市場から巨額の資金を調達しており、それを原資に選別されたプロジェクトに対し、借り手にとって有利な条件で融資しています。EIBは利益の最大化そのものを目的とはしておりませんので、調達コストに近い条件で融資を行なっているのです。
EIBは2009年に総額794億ユーロの資金を資本市場より調達しており、2010年にも同程度の調達を見込んでいます。EIBの資金調達戦略の最大の特徴は、潤沢な流動性と高い透明性の追求、調達源の多様化、大型起債や私募債をバランスよく取り混ぜた起債プログラムの実施です。こうした戦略に支えられ、EIBはAAA格付を有する複数の通貨建ての大型起債を主導的におこなう発行体として、市場で独自の地位を築いています。
EIBが起債する債券の85%はユーロ、米ドル、ポンド建てですが、その他の多くの通貨建てでも起債を行っています(2009年は16通貨で起債)。日本円はこれまでも非常に重要な起債通貨となっています。ここ数年間日本での起債が特に活発となっていますが、これは機関投資家向け円建て公募債が復活したことに因るもので、これが継続的な円建て仕組債や売出債での起債を補完する形となっています。

地球温暖化への取り組み

EIBはなぜ地球温暖化防止の分野に注目しているのですか?
温暖化に歯止めを掛けるためには、気温上昇を2度以内に抑える必要のあることが科学的に証明されるようになっています。これを実現するためには、温室効果ガス排出量を2050年までに世界全体で1990年実績から少なくとも半減させねばなりません。そのためには、エネルギー源を化石燃料から再生可能エネルギーへと移行し、エネルギー効率の改善をはかる世界的なエネルギー体系の構築が早急に求められています。その実現には巨額の投資が必要であり、2030年までに恐らく7兆ユーロが必要とされる見通しです。
EUは温暖化への対策として意欲的な目標を掲げています。EUは、2020年までに(1)温室効果ガス排出量を1990年実績比で少なくとも20%削減する、(2)EU全体のエネルギー消費量の20%を再生可能エネルギーで賄う、(3)エネルギー消費効率を高めEU全体のエネルギー消費量を20%削減することを公約しています。EIBは、EUの融資機関として、これらの目標達成に向けて重要な役割を果たすことになります。
EIBの具体的な活動内容を教えていただけますでしょうか。
EIBの温暖化防止に向けた力強い姿勢により、再生可能エネルギーとエネルギー効率改善の両分野への融資は大幅に拡大しました。
再生可能エネルギー分野への融資額は2009年に約40億ユーロと、2007年、2008年の約20億ユーロの水準からほぼ倍増しました。EIBは、EU域内のエネルギー・プロジェクト関連融資の少なくとも20%を再生可能エネルギー分野向けとするとの目標を設定しています。
一方、エネルギー効率を少なくとも20%改善させることを目指したプロジェクトを対象とした融資は2008年に7億ユーロを超え、2009年は10億ユーロを上回りました。なお、EIBが行う全てのプロジェクト向け融資は、融資対象となるプロジェクトがエネルギー効率改善の機会を提供するものか否かを審査しています。
もう一つの重要な点は、温暖化防止に関する研究開発・革新(RD&I)向けの融資においてEIBが重要な役割を担っていることです。近年、EIBは革新的な技術や製造工程を対象とした融資規模を拡大しました。太陽光発電、洋上風力発電、太陽熱発電、並びにバイオ燃料などがその例です。また、EIBは航空機や自動車の温室効果ガス排出削減やエネルギー効率の高い小型自動車に関連した技術の普及を推進しています。EIBによる温暖化防止関連の研究開発向け融資は過去数年で劇的に増加し、2009年には50億ユーロに達しました。
EIBはこの分野では日系企業を含むEU域外の企業とも連携しています。例えば、スペイン及び英国の日産自動車との協力による、電気自動車(EV)の組立工場・電池工場・EVテスト施設の建設プロジェクトに対して融資を行っています。このプロジェクトにかかる費用は総額10億ユーロと見込まれており、そのうちEIBからの融資額が4億ユーロとなっています。
温暖化対策プロジェクトに対する融資額は、融資総額のうちどれぐらいの割合を占めているのでしょうか。
2009年に行った全ての融資を合算すると、温暖化防止に直接関与するプロジェクト向けのEIBの融資額は約160億ユーロとなり、これは2009年の総融資額の約20%に相当します。このことは、EIBが温暖化対策事業に対する最大の国際融資機関であることを改めて裏付けるものです。EIBは2010年の融資プロジェクトの総数の20%を温暖化防止関連プロジェクト向けの融資とすることを目標に掲げています。

EIB『エコロジー・ボンド』について

さて、5月に日本での売出しが予定されている『エコロジー・ボンド』についてご説明いただけますでしょうか。
『エコロジー・ボンド』は、最上級の信用格付けを有するEIB債への投資の機会を提供すると同時に、温暖化防止プロジェクトに貢献するものです。『エコロジー・ボンド』により調達される資金はEIBの一般融資ポートフォリオから隔離され、温暖化対策の柱となる再生可能エネルギー及びエネルギー効率改善に関連した分野の融資プロジェクトに使用されます。
なるほど、投資を通じて社会に貢献できる画期的な手法というわけですね。今回は日本での売出しですが、海外でも温暖化防止プロジェクトに貢献するような債券を発行してきたのでしょうか。
EIBが最初に発行したのは「Climate Awareness Bond“気候変動への認知を高めるための債券”(2007年、2009年)」で、環境関連の特徴を幾つか併せ持つユニークな債券として発行されました。同債券は、再生可能エネルギーやエネルギー効率改善の分野におけるEIBの将来のプロジェクトに向けた資金を調達するだけでなく、欧州連合域内排出量取引制度(European Union’s Emissions Trading Scheme)を通じてCO2排出権を購入する権利が付与されていました。また、同債券のリターンは、同債券発行に際しFTSEによって特別に開発された新株式インデックスFTSE4GOOD ENVIRONMENTAL LEADERS 40 INDEXのパフォーマンスに連動します。この革新的な債券は、投資家だけでなく、他の市場参加者やメディアの関心を集めました。
再生可能エネルギーやエネルギー効率改善の分野に貢献する債券ということですが、具体的にどのようなプロジェクトに投資するのでしょうか?
再生可能エネルギー及びエネルギー効率改善分野向けの融資プロジェクトには以下のものが含まれますが、対象はそれに限定されません。
・ 風力、水力、太陽光、地熱エネルギー生産などの再生可能エネルギー・プロジェクト
・ 地域暖房、コジェネレーション(熱電併給)、建物の断熱、送電時のエネルギー損失の低減、装置の交換によるエネルギー効率改善(※少なくとも20%の改善を目指します)などのエネルギー効率改善プロジェクト
融資の対象となるプロジェクトが決定されるのは、債券の払込終了後となりますので、ここでは詳細をお知らせできません。ご参考のために、過去に発行したClimate Awareness Bondsにより調達した資金がどのようなプロジェクトに充てられたかをご紹介します。
2007年に発行したClimate Awareness Bondsの調達資金6億ユーロは、6カ国におけるプロジェクト14件に充当されました。風力発電所、太陽熱発電所、風力タービン、地熱発電所、温室効果ガス排出削減を重視したクリーンで効率的な電車の開発、省エネや温室効果ガス排出削減を考慮した賃貸用公営住宅の改築などがその例です。これらのプロジェクトの詳細については、EIBが作成したCorporate Social Responsibility Report for FY2008をご参照ください。同レポートはEIBのウェブサイト(www.eib.org)にてダウンロードが可能です。
また、今回の『エコロジー・ボンド』の起債後、1年ごとにEIBの地球温暖化対策事業についてまとめたレポートを作成いたしますので、そちらもご覧頂ければと思います。
投資した資金がどのように使われたのかは、やはり関心の集まるところですので、そうしたレポートを通じて投資家とEIBが定期的に“つながり”をもつことができるというのは素晴らしいことだと思います。本日はどうもありがとうございました。
(2010年4月)
投資を通じた社会貢献−インパクト・インベストメント−
大和証券グループ本社
CSR社会的責任への取組み
大和総研
大和総研発表のレポート集

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